こんにちは
検査技師のすみこ(@sumiko1020)です
今回は消化管の解剖生理と超音波検査で観察するポイントを簡単に説明していきます
消化管とは?
消化管は口腔〜食道〜胃〜十二指腸〜小腸〜大腸〜肛門までの総称を言います。
消化管の長さは以下の通りです
食道…25㎝
胃 …25㎝
小腸…5m(十二指腸25〜30㎝、空腸2/5、回腸3/5)
大腸…1.5m
消化管の長さは25㎝を覚えておこう!
胃壁の5層構造
消化管の構造は多少の厚みの差はありますが、構造は基本的に同じです。
胃が最も典型的かつ自分でも描出しやすいので消化管の壁の構造を理解するのにおすすめです
内側から以下ように描出されます
第1層…内腔と粘膜の境界(高エコー)
第2層…粘膜筋板を含む粘膜層(低エコー)
第3層…粘膜下層(高エコー)
第4層…固有筋層(低エコー)
第5層…漿膜層と周囲組織の境界(高エコー)
消化管の固定点
消化管は動く臓器なので、闇雲にプローブを当てても部位を断定するのは難しく、それにより苦手意識を持つ人もいます。
そんな人はまず一番最初に当てる場所を決めましょう
消化管は固定点という一定の箇所で腹壁などに固定されています。
固定点から順に追っていくと消化管を比較的見失わずに走査できますよ
固定点は食道胃接合部、十二指腸下行部、上行結腸、下行結腸、直腸の5点です。
消化管エコーは固定点からスタートするとわかりやすい!
消化管エコーでどこを見るの?
なんとなくでも消化管を追えるようになったら、診断方法について意識しましょう
消化管エコーでどんなところを注視して、何を観察しているか。これを念頭に検査するだけでも検出率は上がりますよ!
今回は消化管を観察する際の5つのポイントについて説明します
1.壁肥厚の程度
消化管の壁は炎症、浮腫、血管拡張、癌の浸潤範囲などを反映して肥厚します。
それぞれの部位の壁厚は覚えておきましょう
食 道 … 5㎜以内
胃 … 5㎜以内(幽門部付近8㎜)
十二指腸… 3㎜以内
小 腸 … 4㎜以内
大 腸 … 3㎜以内
2.壁の層構造
壁の層構造の有無を見ることで炎症の強さや癌の壁進達度がわかります。
明瞭なものでは壁が肥厚すると5層構造がよりはっきりとわかりますが、炎症が強くなる、もしくは癌がある部分は壁内エコーレベルが低下し層構造の境界が不明瞭になっていき、ついには消失します。
例)急性虫垂炎の壁の層構造と管腔径による3つの分類
カタル性:層構造温存、粘膜下層の軽度肥厚(径6〜8㎜)
蜂窩織炎性:粘膜下層の著名な肥厚(径8〜10㎜)
壊疽性:層構造の不明瞭〜消失、穿孔の場合は欠損(10㎜〜)
3.病変の部位や範囲
病変がどの部位にあるのか、限局性か瀰漫性かなどは病変の特定に重要な所見となります。
限局性のものは腫瘍や単発性の潰瘍、瀰漫性のものはスキルス胃癌や炎症所見、スキップ病変はクローン病などが候補に挙げられます。
例)腸炎の好発部位
潰瘍性大腸炎…直腸から連続して存在することが多い
虚血性大腸炎…S状結腸(左側)〜下行結腸に多い
薬剤起因性大腸炎…上行結腸〜横行結腸にかけて、もしくは横行結腸に限局性浮腫性肥厚像を呈する
この他にも感染性腸炎では原因菌によって炎症を起こす部位や壁構造の変化に違います
4.血流の有無
ドップラエコーや造影エコーを用いて壁内の血流状態を観察します。
ドップラーエコーでは比較的血流量の多い血管を描出できます。スクリーニングでも使用でき、血流の有無や血流波形の分布、形態を観察します。造影エコーを実施していない施設ではドップラーエコーでの血流の評価が重要となるのでPRFを下げるなどして低流速波形がないかしっかり確認しましょう
造影エコーでは微細血管を描出できます。腫瘤の形状や炎症の活動性、虚血の判定などより詳細な検査を行えます。造影剤注入から時間経過により動脈相、門脈相、後血管相の3つの時相で造影効果を観察します。
5.壁周囲の変化
腸管内だけでなく病変部周囲も観察しましょう
壁外へと炎症が波及していたり、腫瘍が浸潤している場合、病変周囲の脂肪織が肥厚し高エコーを呈します。
また、周囲リンパ節の腫大や腹水の有無なども重要な炎症所見になります
急性虫垂炎では虫垂を取り囲むようにhigh echoが描出されるよ
(isolation sign)
まとめ
いかがでしたか?
超音波検査は観察するポイントを知っているのと知らないのでは病変の検出率が大きく変わります。
始めたばかりの方は上記の5つのポイントを意識することから始めましょう
また、疾患別の特徴的な所見を覚えると他に観察するべき部位も見えてきてより内容の濃い検査を行うことができます。
消化管疾患の所見は超音波検査士の試験でもよく出題されるのでしっかりと確認しましょう
コメント